1983年08月30日

「炉(たたら)製鉄」と「近代製鉄」

備陽史探訪:13号」より

立石 雪夫

日本の近代製鉄は一八九六年(明治三〇)、官営八幡製鉄所創設頃から始まるのですが、それより前千数百年に亘って日本人の歴史を支えてきた鉄は、すべてたたら製鉄によるものでした。

今日たたらについて知っている人は案外少ないのです。今回備探の会(備陽史探訪の会=長たらしいので私は勝手に略称)が十日の一泊例会で出雲地方を探訪、日本で唯一つ、 一括遺構の現存する吉田村の菅谷たたら、その他を見学されることは得難い機会だと思います。

たたら製鉄と近代製鉄とは、大まかに言えば製鉄法の原理において違いはないと思います。以下その主な対比を示して事前学習の参考に供すればと思います。

たたら製鉄法

一、釜=耐火法を講じた粘土製の炉(この中で砂鉄を溶かす)

二、原料=花闇岩などが風化して分離した砂鉄(川砂鉄、山砂鉄、浜砂鉄)

三、燃料=木炭。釜の中へ砂鉄と混ぜ火をつけ風を送り木炭を引き続きつぎ足す。

四、炉への送風=足ふみ鞴(ふいご)による。(後には水力鞴も考案)鞴はたたらとも言い、炉のある高殿をもたたら、後には製鉄工場を一括してたたらという。

五、鉄の製造工程=炉の底に固った鉄(鉄をずく、鋼をけらという)を釜をこわして取り出し、破砕して類別し、これを大鍛冶屋に送り類別された素材を鍛錬しながら鉱滓を除き、用途別の鉄材をつくる。村や町の鍛冶屋(小鍛冶)は其の鉄材で農具工具刃物生活用品等の製品をつくる。

六、立地=砂鉄産地で同時に大山林地帯。

近代製鉄法

一、高炉(鉛鉱炉)=耐火煉瓦でトックリ型に築いた炉。

二、鉄鉱山から掘り取った鉄鉱石(磁鉄鉱・赤鉄鉱・褐色鉱等)その他石灰石等。

三、コークス等。原料とコークスなどを炉に入れ送風する。

四、高炉のそばにつくられた「熱風炉」から高熱の風を送る。燃料はコークス等。

五、最近は高炉から熔融した儘の鉄(銑)を転炉・平炉・電気炉等に送り、更に圧延工程を経て用途別の鉄材をつくる。

六、臨海工業地帯。資材を遠く海外に求める。