10月13日【歴史講演会】「備陽史研究 第30集」発刊記念講演会 開催
「備陽史研究」第30集が8月に発刊されました。今回は近年まれに見る充実した内容で、古代、中世、近世の各時代の論文がそろい踏みとなり、且最近の大発見である福山北部に存在した古代山城「茨城」のレポートも収録されています。また中世備後の国衆に関する考察、草戸千軒が洪水で滅んだという伝説の元となった草戸の新涯壊滅の真相とその後、中世の小城主がいかにして近世を乗り越えて来たか、また古代の歴史を左右した気象変動についての考察など盛りだくさんの内容となっています。
この内容をより良く理解していただく為に、各執筆者に解説を含め講演していただきました。
田口会長からは「備後の国衆 -その分布と特徴-」ということで
国衆を格式上の存在と捉え、備後地域にどんな国衆が存在したのか、その分布と特徴を解説して頂きました。
また古代山城研究家で会員の松尾さんからは「備後における古代山城の展開 -築城基盤と可視領域の検討-」ということで
異例とも言うべき近さで築かれた備後国の古代山城2城を対象として、地理的特徴と築城組織の分析、及び2城の現況およびそこからの広域展望の意味を解説して頂き、ました。ドローンによる俯瞰写真の説明からは、地形を巧みに生かした山城の構造が良くわかりました。
瀬良さんからは「「江戸新涯」を考える -城下を洪水から守るための試行錯誤-」ということで
福山の大正8年の洪水の遠因は水野藩による江戸時代初期の芦田川改修にあり、それを様々な対策で乗り越えてきたものの、その歴史が忘れ去られついに大正になって洪水を引き起こしたことが解説されました。
野田さんからは「福山水野家に仕官した備中秋町城主 田井氏に付いて」ということで
秋町城の場所が高梁市史の場所と違うことが示され、中世の小城主の実態と歴史についての解説がありました。
どの講演も興味深く、それぞれの論文の理解を深めることが出来ました。