2000年02月05日

郷土史入門(福山の歴史の調べ方)

備陽史探訪:93号」より

田口 義之

去る一月三〇日、当会の平成一二年度の総会が盛大に催された。出席者は七〇名を越えただろうか。かつての総会を思い出すと今昔の感に堪えない。また、出席者諸氏には、本年度の活動予定を見て、さぞ驚かれたことであろう。本会報にも掲載されているとおり、今年は創立二〇周年を記念して例年のほぼ倍の行事予定が組んである。

これは皆さんにとっても、私にとっても大変喜ばしいことである。むろんこれだけの行事にすべて参加するのは容易ではない。

私がこの年間計画を見て喜ぶのは、会の裾野の広がりをこの行事予定を見て感ずるからである。我々の会の例会その他の行事は、特定の個人が主催するのではない。会のよき伝統となっている「担当者」が具体的に計画を立て、それを会の行事として事務局その他の世話人が協力して実施する。

つまり、これだけの多彩な行事を計画できるというのは、それだけ会の人材が豊富になったということである。これが今回の総会を振り返って私が特に注目する点である。

幾度も述べるように、当会の第一の特徴は「だれでも」会の行事の担当者・講師になれるということである。郷土史や歴史に関心をもつようになると、次第に特に関心をもつ地域や時代、歴史上の人物について、自分なりの意見や考えをもつようになる。そして、それが昂ずると他人に自分の意見を発表したくなるものだ。だが、一般の人はその場がない。我々は探訪の会の会員として、その機会が十分与えられている。これが「備探の会」の醍醐味なのである。

しかし、今や三百人の会員を擁するようになった当会としては、まだまだ人材を発掘する必要があろう。例会や講師の番が回ってくるのを心待ちにする、そういう会になりたいものである。さて、歴史には関心があるが「郷土史」は苦手である、という人も多い。原因は、どうも地域の歴史の調べ方が分からない、ということにあるらしい。確かに、日本史や世界史一般と違って郷土史には手ごろな入門書がない。だが研究の方法はそれなりにある。

今回、私が担当することになった、二月例会「山南の歴史を探る」を例にとって、その調査研究の方法を述べてみよう。まず、最初はその地域の郷土史書を探すことだ。この地域の歴史の入門書としては、村上正名先生の『備後の今昔』が手ごろだろう。この本は市民図書館などで容易に見ることができる。地域の歴史のアウトラインが分かったら、もう一歩進めて、見学予定地(今回は光照寺や悟真寺などの仏閣、丸山城・何鹿城などの中世山城)に関する史料を集める。こうしたとき役に立つのが郡誌と江戸時代の地誌だ。山南は沼隈郡だから図書館に行って『沼隈郡誌』を見る。また、備後叢書の『西備名区』や『備陽六郡志』『福山志料』も必見である。また、図書館を訪ねたときは二階の郷土資料室で沼隈南部の史料を探す。地元の郷土史の雑誌として『文化財ぬまくま』や少し古いが、地域の総合雑誌『まこと』も必見の資料の一つだ。

書斎での研究はここでひとまず終わる。次はいよいよ現地調査である。現地に出かける前には地図を用意する。国土地理院の二万五千分の一・五万分の一の地形図か市販の福山市の地図を書店で買う。

そして、日を決めて現地を訪ねる。このとき時間の余裕があれば教育委員会で地元の郷土史家の住所氏名を聞き、訪ねてみるのもよい。書物では分からないような機微にわたる話を聞かせてくれるはずだ。あとは調査の結果をまとめ、当日の資料にするだけである。

以上は、あくまで個人で行う場合である。幸いなことに皆さんは備陽史探訪の会の会員である。会には城郭・古墳・歴史民俗の各部会があり、各分野地域の歴史に詳しい方がたくさんいる。分からないことはまず会の人に相談する。

郷土史は受身になるのではなく、自分でテーマを決め、一歩踏み込むべきである、そうすると必ず新しい発見があるはずだ。発見は喜びを呼び、新たな意欲を生む。「新米」郷土史家の誕生である